水景の学術研究所

主に高校生、大学生向けの学習・研究に役立ちそうなことを書きます

学問って何だろうね?

 

「学問」と聞くと、どんなイメージがありますか?

 

 何かよくわからないけど、小難しい話なんだろうなぁ。

 大学で勉強する、何か難しい勉強。

 

 他にも色々なイメージがあることでしょうけれど、

 一般に、学問とは、日常生活からはちょっと離れた別の世界。

 そんな感じのイメージが強いのではないかと思います。

 

 結論から言えば、ある意味で、この感覚は正しく、別な意味で間違っています。

 今回は、学問の出発点となるこの感覚についてのお話です。

 

 

 

 

 1 学問は暇でなければできない!?

 まずは、ある意味で正しい方の話から。

 学問・学者・学校といった言葉を英語にすると、

 それぞれ scholarship、scholar、school です。

 

 これらの単語に共通するのは、schol という部分。

 これは、ギリシア語で schole という単語が語源となっています。

 schole という単語の意味は、「時間的余裕」「暇」という意味です。

 

 人類の歴史上、学問という体系的な形でまとめられたとされるのは、

 古代ギリシアの時代。特に、プラトンが創設したアカデメイア

 アリストテレスが創設したリュケイオンといった施設が始まりとされています。

 

 この古代ギリシアの時代において、

 学問を学ぶことができる者は一部の者だけでした。

 というのも、識字率(読み書きできる能力)が現代ほど高くはなく、

 義務教育で多くの人間に学びの機会が与えられていたわけでもありません。

 

 つまり、この時代において、学問とはある種の「金持ちの道楽」だったのです。

 普通の庶民は、小麦を作り、家畜を育て、生きるのに必死で、

 学問を学ぶ余裕など全くなかった時代だったのです。

 

 そういう意味で、学問には時間的余裕があることが前提とされ、

 日常生活からは離れた別の世界のことというイメージが生じた結果、

 それゆえに、schole という単語が後に「学問」を指す語に派生したのです。

 

 

 2 学問は決して特別なことはしていない!?

 次は、別な意味で間違っている方の話。

 古代から脈々と受け継がれてきた学問の本流。

 その流れの中で解明されたこともあれば、現代に至るまで研究中のこともあり、

 学問と一口に言っても、その研究分野は実に様々なものがあります。

 

 しかし、どんな分野にしても、

 学問とは、決して特別なことをしているわけではないのです。

 

 例えば、学問の祖と言われている古代ギリシアの哲学者たち。

 彼らは、「万物の根源とは何か?」という研究テーマを持っていました。

 

 タレスは、水だと言い、

 ヘラクレイトスは、火だと言い、

 ピタゴラスは、数だと言いました。

 

 「万物の根源」なんて難しい言葉で言えば、難しく聞こえますが、

 結局、「この世界ってどんな仕組みなんだろう?」という単純な疑問なのです。

 

 タレスが言う「水」とは、

 ヒトを含めた生物は、水がなければ生きていけないということや

 哺乳類をはじめとする生物は、羊水の中から生まれてくるといった経験則から

 水の存在が世界の仕組みに関係しているはずだという意味と解されています。

 

 同じように、ヘラクレイトスが言う「火」は、

 火が生み出す熱や光といった、今でいうエネルギーに着目し、

 火が持つ「エネルギー」が世界の仕組みに関係していると考えたそうです。

 

 ピタゴラスが言う「数」とは、

 古代ギリシアで流行っていた天文学的な観点から生じた発想で、

 昼に空を見上げれば太陽が、夜に空を見れば星が見えるけれど、

 果たして、こういう天体が空に見えるのはどうしてなのだろう?

 そんな疑問から進めていった発想だったのです。

 

 

 誰でも、子供の頃にこんな疑問を持った経験はありませんか?

 

 空はどうして青いんだろう?朝と夕方は赤く見えるのに。

 海にどうして波は立つんだろう?川は水が流れるだけなのに。

 テレビってどんな仕組みなんだろう?

 

 学問がやっていることは、言ってしまえばこんな純粋な疑問の解明です。

 古代ギリシアの諺に「哲学者と子供は同類である」という言葉があります。

 それだけ、学問的探求とは、子供のような純粋な疑問から生じるということが

 既に古代の時代から言われてきたということなのです。